診断

ASO患者は全身の主要臓器に動脈硬化性疾患を合併していることが多く、生命予後は極めて不良です(図7)。従って、適切な診断による早期発見が重要になります。
診断の中でも「問診」と「触診」は、ASOを診断する上で特に重要です。

問診

ASOは、リスクファクターとして他の動脈硬化性疾患と同様に、喫煙習慣や糖尿病、高血圧、高脂血症や肥満などが挙げられ、60歳以上の男性に多いとされています(図1)。従って、潜在化しているASO患者を見逃さないためには、これらのリスクファクターを有する患者に対して「ASOの存在を疑う」ことが必要です。

高齢者は、「しびれ」や「冷感」などの初期症状を年齢のせいと考え訴えないケースが多いため、リスクファクターの有無や冷感などの症状を積極的に聴取することが必要です(図9)。また、間歇性跛行症状は、脊柱管狭窄症(spinal canal stenosis;SCS)などの疾患でもみられるため、鑑別診断も重要です(表2)。

図9:動脈硬化は足にもくる

脊柱管狭窄症(SCS)
加齢などにより、脊柱管の内径が狭くなり、神経や血管が圧迫されて起こる。下肢の痛みやしびれなどが主症状。

表2:ASOとSCSの鑑別ポイント

視診

主なものに挙上試験と下垂試験があります。

1)挙上試験
仰向けに寝て両下肢を上げて屈伸運動(約30秒)を行い、左右の足の色調を調べます。
狭窄・閉塞がある患側には蒼白がみられます。

イラスト 挙上試験

2)下垂試験
椅子等に腰掛けて両下肢を下垂させ、足が赤みを帯びてくる時間の左右差を調べます。正常肢では、10秒程度で赤みを帯びてきますが、狭窄・閉塞がある患側では、1分以上かかることもあります。

イラスト 下垂試験
触診

触診では、左右の肢を比較することが極めて重要です。
下肢の皮膚温、動脈拍動の強さ(なし、弱い、正常)を左右の肢で比較することで、狭窄・閉塞の有無を調べます。狭窄・閉塞がある患肢では、末梢で拍動が弱かったり、消失していたりします。

足背動脈
足背動脈

< 拡大 >

足背動脈の触診では、手の指三本を、足背動脈にあて拍動の有無を調べます。左右差を知るために、両側同時に触れます。

膝窩動脈
膝窩動脈

< 拡大 >

膝窩動脈の触診では、仰向けに寝ている患者の前方に立ち、両手で膝を抱えて後方から膝窩を圧迫し、拍動の有無を調べます。

後脛骨動脈
後脛骨動脈

< 拡大 >

後脛骨動脈の触診では、左足の場合、患者の左側に立ち右手で拍動の有無を調べます。場合により両側同時に触れ左右差を調べます。

上腕・足関節血圧比(ABPI)

近年、golden standardな診断方法として、四肢の血圧から得られる上腕・足関節血圧比(ankle brachial pressure index;ABPI)があります。ABPIは、足関節収縮期血圧/上腕収縮期血圧の比で、ASOの客観的な診断および重症度評価の指標とされています。

ABPI

ABPI測定の問題点としては、透析患者や糖尿病患者は動脈壁の石灰化により、充分な圧迫が得られず、ABPIが通常より高くなってしまい偽陰性を示すことがあります。このような症例では、(1)運動負荷後のABPI、(2)足趾血圧によるTBPI(toe brachial pressure index)の計測が有用です。

画像診断

初期症状における循環障害の有無の判定は、画像診断でなくても可能ですが、病変部位の特定などを行うには何らかの画像診断が必要になります。画像診断には、主に以下のものが挙げられます。

1)

超音波検査

超音波を用いて血管径を計測することで、狭窄部と非狭窄部の比率より狭窄率を数値で表し、血流を測定することで血流速度波形を分析し、狭窄部を検出することが可能です。また、カラードプラ法を応用することで、ほぼ全身の動脈が観察可能であり、現在最も期待されている検査方法の一つです。難点は、精度が術者の技術に依存することであり、わが国においても、専門技師を育成する体制が必要とされています。

duplex scan

duplex scan

< 拡大 >

2)

血管造影(angiography)

カテーテルからヨード造影剤を血管内に注入し、X線撮影を行います。それにより血管の形状を調べます。最近では、カテーテルの改良、副作用の少ない造影剤の開発が進み、体の負担(X線被爆や腎臓に対する負担)はかつてより少なくなっています。また、デジタルサブトラクション血管造影(digital subtraction angiography;DSA)と呼ばれる骨の重なりに影響を受けずに、細かい血管をコンピュータ解析できる技術も開発されています。

DSA

デジタルサブトラクション血管造影(digital subtraction angiography;DSA)

< 拡大 >

血管内治療前 血管内治療後

デジタルサブトラクション血管造影(digital subtraction angiography;DSA)

< 拡大 >

3)

CT血管造影(CT angiography;CTA)

コンピュータ断層撮影装置(computed tomography;CT)を用いた血管造影です。CTAはMRAと比べて細かい血管も観察することが可能です。また、血管壁の石灰化の程度も観察できるため、治療方針を決定するのに有用です。

血管壁の石灰化の程度が強い場合には不鮮明になる場合があり、MRAのほうが適している場合もあります。
CTA

CT血管造影(CT angiography;CTA)

< 拡大 >

4)

MR血管造影(MR angiography;MRA)

磁気共鳴撮影装置(magnetic resonance imaging;MRI)を用いた血管造影です。造影剤を使用しなくても撮影可能ですが、ガドリニウム造影剤を使用することで、より鮮明な画像診断が可能です。また、ガドリニウム造影剤はヨード造影剤とは異なり、腎負荷が少ないため、腎機能が低下している患者には有用な方法といえます。

磁場・電磁波を使用するため、ペースメーカーなどを使用している患者には注意が必要です。
MRA

MR血管造影(MR angiography;MRA)

< 拡大 >

画像診断にはそれぞれ長所と短所があるため、どの検査方法が適しているかを見極め、組み合わせるなどしながら検査を行う必要があります。