疫学・転帰・予後

発生頻度

わが国では、人口を基に集計したものはみられないため、ASO発生頻度に関する正確な数値は発表されていませんが、食生活の欧米化と高齢化により、ASOの患者数は年々増加しています(図3)。

図3:東京大学血管外科における慢性動脈閉塞症患者の推移

また、60歳以上を対象とした調査で、秋田県では24%、奄美大島では21%が「ASOの疑いあり」という報告もされています(図4)1)2)

1)千葉 覚 他: 日血外会誌, 5: 549, 1996.
2)小代 正隆 他: 鹿児島大医誌, 52: 1, 2000.

図4:国内の疫学調査によるASO患者の割合

これらの疫学調査と2002年の60歳以上の人口から推察すると全国に約660〜760万人ものASO患者がいると推測されます。しかし、実際に治療を受けている患者数は78,000人(2002年の厚生労働省による患者調査)であり、多くのASO患者が潜在していると考えられます。

他疾患との合併率

「ASOは全身の動脈硬化病変の一部分症」といわれるように、ASO患者の動脈硬化は全身に及んでいると考えられます。そのためASOの併存疾患も多岐にわたり、糖尿病は約30%に、脳血管障害、虚血性心疾患は約23%の頻度で併存していると考えられています(図5)3)。高血圧にいたっては半数近くも併存していると考えられます。

3)重松 宏 他: Therapeutic Research., 13: 4099, 1992.

図5:重症虚血肢に見られた併存疾患の頻度

また、冠状動脈撮影により60〜70%になんらかの閉塞性病変が認められ、duplex scan(超音波血流検査)による頸動脈の観察で、頸動脈の50%以上に及ぶ狭窄性病変が26%に認められています4)

4)北川 剛 他: 脈管学, 42: 791, 2002.

好発年齢・性差

好発年齢は60歳以上で (図6)5) 、男性が圧倒的に多いとされています。

図6:大規模な地域集団における症候性PADの平均有病率

生命予後

ASOは、心・血管系疾患を合併することが多く、生命予後は極めて不良です。当然のことながらその死因の半数以上が虚血性心疾患や脳血管障害で占められています。

間歇性跛行患者の5年後の生存率は70%前後、10年後では40〜50%となります。また、重症虚血肢(critical limb ischemia;CLI)患者では、1年後には約20%が死亡し、5年後の生存率は半数以下となっています(図7)6)

図7:ASO患者の生存率

さらに、重症ASO患者の生命予後は乳癌患者や大腸癌患者の生命予後と比較しても不良であるといわれています(図8)7)

図8:5年間の相対死亡率